夏なんです
2005年07月13日
象との夏
「ビールが美味い季節になってきたね」 と僕が言った。
「まぁ、僕の故郷では年中こんな感じさ」 と象は教えてくれた。
「夏が来ると、故郷が恋しくなったりしないかい?」
「年中、恋しいさ。でも、ここでこうやっているのも悪くはないよ。
暑い夏が来てビールを飲んだら、どこにいても君は僕のことを
思い出してくれるだろう?
もし僕が忘れられて箪笥の隙間に落っこちて埃だらけになっていても、
きっと君は僕を思い出して、一所懸命探して見つけ出してくれるはずさ。
そうして、また一緒にビールを飲んでくれるだろうからね」
「もちろんだよ。君は僕の夏の一部だからね」
僕はそう言って、乾杯した。
網戸越しに入ってきた風が部屋のカーテンを揺らした。
扇風機はゆっくりと夏の空気をかき混ぜていた。
Nikon D1H, AF Nikkor 50mm f/1.4 D